カイロス時間:All Dogs Live in the Moment--飼い主と一緒なら、何歳からでも犬は変われる

[2022]オオカミとイヌは、食物を与える状況での間接的・直接的な体験の後、人間に対する評判を形成することに失敗する

Wolves and dogs fail to form reputations of humans after indirect and direct experience in a food-giving situation

書誌情報Hoi-Lam Jim, Marina Plohovich, Sarah Marshall-Pescini, Friederike Range, Research Article,  PLOS ONE, published 17 Aug 2022, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0271590

Notice

表題の論文を日本語訳してみました。翻訳アプリにかけた日本語訳を英文に照らして修正していますが、表記のゆれや訳の間違いがあるかもしれません。正確に内容を知りたい方は、原文をご覧ください

要旨

集団生活を営む動物の社会的相互作用において、信頼できるかどうかは重要な要素であり、協力関係の確立に関与しているようである。

動物は個人と直接交流することによって、あるいは個人と第三者との交流を観察することによって、すなわち様子を窺うことによって、個人に対する評価を形成することができる。

これまでの研究では、犬(Canis lupus familiaris)が人間との協力関係を築くために様子を窺うことができるかどうかが注目されてきたが、結果はまちまちで、様子を窺うことができるとすれば、その能力が家畜化の過程で進化したのか、祖先のオオカミ(Canis lupus)から受け継いだのか不明であった。

本研究では、同じように人の手で育てられ、群れで生活するイヌとオオカミが、食べ物を与える状況下で間接的・直接的な経験を通じて人間に対する評価を形成することができるかどうかを検討した。

実験手順は、ベースライン(実験前に被験者が人を好むかどうかを調べる)、観察、テストの3つの部分からなる。

観察段階では、被験者は2人の人間が犬の実演者と対話する様子を観察し、1人は気前よく犬に餌を与え、もう1人は利己的に行動して犬に餌を与えないようにした。

そして、どちらの人物に近づくかを、彼らが選択することができるようにした。

次の体験段階では、先のフェーズと同様に気前よく行動する人と利己的に行動する人の2人と、イヌとオオカミを直接交流させた。

そして、誰に近づくかを再び選択させる。

その結果、イヌとオオカミは、集団レベルでは間接・直接体験後に気前の良い相手か利己的な相手かを区別しないが、観察段階では気前の良い相手により注意を払い、少なくとも間接・直接体験を組み合わせた後には、気前の良い相手を好むイヌとオオカミがいることがわかった。

本研究は、動物にとって評判形成が予想以上に困難であることを示唆し、動物における評判形成を研究する際の文脈の重要性を強調するものである。

Suzyの見解

この論文は、気前よく食べ物をくれる人が「いい人」で、そうしない人を「悪い人」と決めてかかっているので、この研究の結果やタイトルで、「失敗する」という言い方をしています。

しかし、この実験結果から本当に読み取れることは、「イヌやオオカミは『食べ物をくれるかどうか』という点のみで相手を判断しない」のだということです。

この実験では、もしかすると食べ物をホイホイ与える役を担った人が、犬を嫌いだったかもしれません。

気まぐれで食べ物をあげたり、あげなかったりする人が、それを「あえてしている」と、イヌやオオカミが気付いていたのではないでしょうか。

皆さんも、犬との暮らしにおいて、必ずしもご飯をあげる人が一番好かれている訳ではないことを、実感として持っていると思います。

この研究結果は、犬との信頼関係の構築という点において「食べ物を与えることは必ずしも必要ではない」ということの示唆であると、私は考えます。

関連記事