カイロス時間:All Dogs Live in the Moment--飼い主と一緒なら、何歳からでも犬は変われる

Study 1 モッテコイ課題:Fetching Objects

イヌは飼い主の好みに基づいて選択するため、飼い主のポジティブな感情表現に関連する物体を、自分の好みに反して持ってくるのかどうかを調査した。

主題:Subjects

12頭のイヌ(8頭の雑種犬、ボーダーコリー、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバー、ダックスフンド、平均年齢±SD=3.80±1.17歳、年齢範囲: 1.5~8.5歳、オス5頭、メス7頭)が調査された。

物体選好テスト:Object Preference Test

われわれは、どの物体がイヌに好まれるかを観察した。

飼い主は椅子に座り、イヌをリードにつないだ。その前で、実験者は2つの物体を3~4秒間イヌに見せた(すなわち、両方の物体をイヌの鼻の前に置いた)。

一方の物体は右手に、もう一方の物体は左手に持った(ランダム)。イヌが両方の物体の匂いを嗅いだ後、実験者は両腕を開いた(図1A)。

イヌは自由に物体のほうへ移動することができた。

実験者はイヌが物体をくわえようとしたらそれを取り上げ、数秒後に再び物体を抱えた腕を開いてみせた。

そして、イヌがどちらの物体を追いかけたかを観察した。

イヌがどちらの物体も追わずどれを選択したのか不明確であった場合は、このテストを繰り返して実施した。

明確な選択(イヌが1つの物体を5秒以上継続して見た/触った)のあと、実験者は物体を飼い主に渡して犬のリードを外し、次のテストの方法(始める側と感情の順序)を飼い主に指示した。

飼い主によるデモンストレーション:Demonstration by the Owner

物体選好テスト終了後、飼い主は立ち上がりイヌの前で2つの物体を見せたあと、3m後ろに下がって2m離れた場所に物体を置いた。

その後、片方の物体の後ろにしゃがみ込んで物体に触れ、イヌのほうを見て指示された感情表現(ブレスレットは嬉しい、おもちゃは嫌だ)を3~4秒間行った(図1B)。

デモンストレーションに関して、Turcsán et al.(2015)のプロトコルに従った。飼い主は言語化を伴う顔や体のジェスチャーの両方を表示した。

飼い主には、普段(イヌを遊びに誘おうとするときや、飼い主にとって特に嫌なことを見つけたときなど)から行っているように、これらの感情を表示するようにするよう指示した。

なお、デモンストレーション中はイヌに対する命令としてイヌに知られている言葉を使うことは禁止した。

図2. 調査2におけるマッチング条件(飼い主はおもちゃに喜び、ブレスレットに嫌悪感を示す)と非マッチング条件(飼い主はブレスレットに喜び、おもちゃに嫌悪感を示す)でのおもちゃとブレスレットを見る時間の長さ(単位:%)。有意差を示す(**p < 0.01)。

そして、飼い主はその物体を元の場所に戻し、もう一方の物体まで歩いて行き、割り当てられたもう一方の感情でこの表現を繰り返した。

このとき、実験者はイヌの後ろに黙って立ち、物体の中間にある点を見る。

デモ終了後、飼い主は物体を床に置いて椅子まで戻って座り、リードを持ってイヌを物体の方向に向けて真ん中に立たせた。

モッテコイ課題:Fetching

飼い主はイヌを放し、すぐに「Hozd」(ハンガリー語で「モッテコイ」)の口頭コマンドを与えた。

飼い主はジェスチャーや方向指示の合図を一切使わず、2つの物体のあいだをまっすぐ見てコマンドを出すことを厳しく指示されていた。

イヌが物体に向かって動き出したら飼い主はコマンドを中断し、黙って動かずに座っていた。

イヌが物体の1つを飼い主のところへもってきたあと、イヌは飼い主に軽く褒められた。

この間、実験者は飼い主の隣に黙って立ち物体の中間にある点を見つめた。

モッテコイ課題のテスト時間は最大1分間であった。

つぎに、実験者は両方の物体を回収し、次のテストはデモンストレーションの段階から始めた。

それぞれのイヌは4回のテストを受け、テストごとに物体の側面とデモの方向(左から右へ、またはその逆)はランダムに変更した。

物体をもってくる段階で、イヌがおもちゃとブレスレットのどちらを取ってきたかを記録した。

統計解析:Statistical Analysis

調査1では、記述統計のみを使用した。

8匹の犬の行動は第二の観察者によってコード化された。

この2人の観察者によるデータは物体の好みと物体の取り込みの変数について完全に一致した。

結果と簡単な考察:Results and Short Discussion

物体選好テストでは、すべてのイヌがおもちゃを選んだ。

モッテコイ課題では、1頭が1回、4頭が3回、7頭が4回全部と、すべての犬が少なくとも1回は対象物をくわえた。

41回のモッテコイのうち、デモンストレーションで飼い主が好んだブレスレットは、2頭の犬によって2回(5%)しかくわえられなかった(1頭は2回目、もう1頭は4回目にブレスレットをくわえた)。

つまり、イヌは自分の好みのもの(おもちゃ)をもってきて、飼い主の好みのものをもってこなかった。

このように、イヌは(1)飼い主のブレスレットに対する喜びの感情から自分と飼い主の好みを区別できないか、(2)飼い主のポジティブな感情によって自分の好みが上書きされなかった(つまり、「間違った」反応を抑制しなかった;Bari and Robbins, 2013)かのいずれかと考えられる。

2つ目の解釈は、おもちゃに関連する報酬と、飼い主の幸福に関連する報酬のとのあいだの競争と考えることもできるが、どちらの解釈においても、おもちゃに関連する行動は抑制されず、飼い主の社会的言及に関連する行動に優先されたと仮定するものである。

さらに、手の届くところにある物体は、より強い選択条件が働くと仮定した(Gibson, 1977参照)。

一方、これまでの研究では、手の届かないところにある物体をイヌに「見せる」行動と思われる方法で刺激することが示されている(Miklósi et al, 2000)。

第二の仮説を検証するため、対象物を手の届かない位置に置くことで直接の接触を防ぎ、遊びの意欲を低下させる可能性があることを明らかにした。

また、おもちゃやブレスレットを見る時間は飼い主の好みを反映したものであると仮定した。

とくに、イヌと飼い主の両方が好む対象物では見る時間が最も長く、両方が嫌う対象物では最も短くなると予想した。

したがって、マッチング条件(オーナーがおもちゃの好みを表明)では、おもちゃとブレスレットを見る時間のあいだに有意差が生じることが予想された。

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